【研究者のための医療機器開発の教科書】① 医療機器該当性調査

医療機器を開発しようとする場合、最初に確認すべきは「自分が作ろうとしているものが薬機法上の医療機器に該当するかどうか」です。

医療機器に該当すれば、製造・販売に製造販売業許可製品ごとの承認・認証・届出が必要になります。

この記事では、医療機器該当性調査の方法について実務目線でまとめていますので、順を追って確認をしてください。

はじめに

■この段階でやること

  • 薬機法上の「医療機器」の定義に該当するか
  • プログラム医療機器(SaMD)に該当するか
  • 体外診断用医薬品(IVD)との違いはどこか

これらの判断を誤ると、規制対象外と思って開発を進めていたのに途中で「医療機器だった」と判明し、計画全体を見直すことになります。

■この段階のゴール

  • 薬機法上の医療機器に該当するかどうか判断できている
  • 該当する場合、体外診断用医薬品との区別がついている
  • プログラム医療機器(SaMD)への該当性が確認できている
  • 不明な場合、PMDAへの照会方法が分かっている

実務の進め方

STEP 1 薬機法上の医療機器の定義を確認する

薬機法第2条4項では、医療機器を「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を与えることが目的とされている機械器具等」と定義しています。

第2条(定義)
4 この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。

医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律 第2条4項(原文:e-Gov)

該当判断の主なポイント

  • 「目的」が診断・治療・予防に向けられているかどうか
  • 対象が人または動物かどうか
  • 使用目的や表示・宣伝内容で判断される(実際の機能だけではない)

「使用対象が人や動物である」=「医療機器」ではない

研究者視点では、検査対象や測定対象が人であることは、必然的に医療機器になるんじゃないかと思う人が少なからずいるのではと思います。「人に対して使うんだから、医療機器に決まってる」と。

法律を見ていただいた通り、日本の法律では、その使用目的が重要視されます。診断・治療・予防に使用する機器や、生体の構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされている機器を医療機器と定義しているんですね。

ピンセットなどでも電子部品をつかむ目的であれば「医療機器」には該当せず、同じ物でも手術室でガーゼや組織をつかむ目的があれば「医療機器」に該当する、といった感じです。

プログラム医療機器(SaMD)の該当性確認

2014年の薬機法改正により、ソフトウェア(プログラム)単体が医療機器として規制対象になりました。

〇 該当しやすいケース
・AIによる医用画像解析・診断補助
・電子カルテから疾患リスクを算出するソフトウェア
・心電図・血圧等の測定値を解析し診断補助する機能
× 該当しにくいケース
・医療機器の付属ソフトウェアとして機器の動作制御のみに使用
・一般的な健康情報を提供するアプリ(診断・治療意図なし)
・医療機器製品の事務・管理系ソフトウェア

■体外診断用医薬品との区別

血液・尿等を検体として体外で診断情報を得る製品は「体外診断用医薬品(IVD)」として、医療機器とは別に規制されます。体内に留置して診断を行う機器(グルコースモニター等)は医療機器として扱われます。

こちらとの違いも確認しておくとよいでしょう。

STEP 2 既製品の医療機器基準を調べる

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(通称:PMDA)が公開している「医療機器等基準関連情報 一般的名称検索」を使うことで、既製品の医療機器情報(医薬品、再生医療を含む)を検索することができます。

こちらから、同等なものや類似品をリストアップしてください。

例えば、超音波を使った機械であれば名称の欄に「超音波」と入力すると、超音波を使った画像検査機器や器具を洗う洗浄機など色々な機器が出てきます。

医療機器等基準関連情報 一般的名称検索

STEP 3 比較表を作成する

調べた基準・一般的名称は表にまとめて比較表を作成しておくと後々良いです。

医療機器該当性調査のほか、この後に実施するクラス分類・一般的名称調査やPMDA相談等でも利用します。

すぐに使えるテンプレートはこちら

STEP 4 各都道府県の薬務課(薬務主管課)への相談

医療機器に該当しているか否かによらず、客観的な証拠は確保しておいたほうが良いので、各都道県の薬務課または薬務主管課にて、確認してください。相談に行く際は比較リストと、開発機器の概要(目的・使用用途・構造)を持参すると話がスムーズです。

PMDAからも下記リンクの通り、医療機器該当性については都道府県の薬務主管課に相談するようにと記載されています。

薬務課で判断できない場合は、PMDAに相談してほしいと伝えられることもありますので、その場合は③に進んでください。

東京都福祉保健局 薬務課HP

STEP 5 PMDA相談

PMDAとは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical devices Agency)の略称で、日本国内における医薬品や医療機器、再生医療等の管理及び審査をしている公的機関です。

PMDA相談は、多くの種類があります。
最初の内はどこに依頼したらいいかわからないと思いますが、この段階ではPMDA簡易相談が良いと思います。医療機器該当性のほかに、申請区分・クラス分類・一般的名称についてもこの段階で同時に相談できるとよいので、次のページも確認してから、準備をしてください。

また、それ以外のことも相談したいことがある場合は、最初にPMDA全般相談を受けることをお勧めします。相談したい内容に応じて、PMDAのどの相談を受けたらいいかといったことを教えてくれます。

Point

(初めてPMDA相談を受ける方へ)
PMDA相談は、会社側で整理した方針に対して、PMDA側の見解を聞くことができる場であり、「こういった機器であれば、この方針が正しいです」といった方針を教えてくれる場ではないことは留意が必要です。

よくある失敗

■既存の機器と「機能が同じなら開発機器も医療機器ではないという判断で大丈夫」と考える

医療機器の該当性は機能だけでなく「目的・表示・宣伝内容」でも判断されます。使用目的の書き方次第で該当性が変わることがあります。

■SaMDへの該当性を後から確認する

ソフトウェア開発が進んだ後にSaMD該当と判明すると、開発プロセス全体の見直しが必要になります。

■広告・アプリ説明文で「診断」「治療」という表現を使う

医療機器該当性は製品の機能だけでなく、ランディングページ・App Store説明・広告などの表示・宣伝内容によっても判断されます。「このアプリで疾患を見つける」「生活習慣病を改善する」などの表現を使った場合、機能自体が規制対象外であっても、「使用目的」が医療機器に該当すると判断されるリスクがあります。表示内容は機能の設計と同じタイミングで薬事的に確認することが必要です。

■「社内利用だから大丈夫」と判断して外部提供に踏み切る

同一企業内で使用するプログラムは、外部への販売・貸与・ダウンロード提供がなければ薬機法の規制対象外となります。しかし、社外の他企業・医療機関への提供(有償・無償を問わず)、オンラインアクセスの付与、アカウント発行なども「製造販売」に該当します。社内ツールとして開発していたものを外部提供に切り替えた時点で未承認医療機器の製造販売となり得るため、展開先の変更時には必ず再確認が必要です。

■「海外で承認・販売されているから日本でも問題ない」と思い込む

FDA(米国)やCEマーク(欧州)を取得した製品であっても、日本国内で製造販売するには薬機法に基づく製造販売業許可と製品ごとの承認・認証・届出が別途必要です。海外での規制状況は日本の該当性判断に直接影響しません。また、海外で「医療機器ではない」とされていても、日本では医療機器に該当するケースもあり得ます。国内展開前に改めて薬機法上の該当性を確認してください。

判断ポイントと意思決定(Pro coming soon)

すぐ使えるテンプレート(Pro coming soon)

参考サイト一覧

本記事の作成にあたり、以下の公式情報を参照しています。

■PMDA 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

■厚生労働省

■公益財団法人 医療機器センター(JAAME)

■AMED 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構

※ 各リンク先の情報は変更される場合があります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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