エンジニアは、今ある研究成果や技術を使って「医療に生かしたい」と思考しますが、その考え方が医療機器開発関連の法律的な考え方と少し乖離しており、今後医療機器化として計画を立てる上で最初の障壁となりますので、この記事を読んで考え方の違いを理解しておきましょう。
エンジニア視点と医学視点の差が分かれば、最短で医療機器事業化への道につながるといっても過言ではありません。
むしろ、この違いを初期に理解していないと、後々さらに大きな障壁となってきますので、絶対に理解しておいてください!
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「技術」が先か、「目的」が先か
「手元の素晴らしい技術があるから、これを医療に応用すれば多くの人が助かる。」
その考え方に間違いは全くもってありません。ただ、医療機器として販売する許可をもらうためには、法律に則って申請する必要があるため、法律の考え方の沿って、実験、申請書類の作成をする必要があるだけです。
現在、2005年の法改正以降は世界的に「ある目的に対して設計開発された機器」に承認を与える、という考え方が使われています。
つまり、「良い機器」に医療機器として承認を与えるのではなく、「何のために作られてきた機器か」という過程に承認を与えるということです。この考え方は、優秀なエンジニアや研究者であればあるほど誤解しやすい点となります。
「何のために作られてきた機器か」という考え方は、最初の目的から機器の設計、性能試験やその記録、部品の選定に至るまで開発の過程すべてにルールが決められており、そのルール通りに記録を残しておくことが重要となります。
重要視されるのは「結果」か「過程」か
エンジニアや研究者は、「結果」に重きを置きます。研究を成功させるため、いい機器を作るため、日々試行錯誤を重ね、最適解を探し当て、得られた「結果」こそ重要で記録しておくべき、と考えます。論文や学会でも「成功した結果」を発表することがほとんどで「失敗した結果」を発表することはありません。
一方、医療機器は今後永続的に医療を提供する機器として品質管理を重要視したり、人への副作用などの影響をできる限りすべて把握し、対策することが求められることから、「過程」に重きを置いています。最高の「結果」に至るまでに重ねた試行錯誤の内容にこそ、品質や生命を守る重要な情報であるという考え方です。
「長所を伸ばす」か「短所をなくす」か
研究開発の視点では、既存のものより優れ、最先端の内容が重要であることから、他の比較した特筆すべき「長所」に着目します。しかし、医療機器業界では、特筆すべき「長所」より、いかに「短所」がないかに着目します。
医療業界では、よくリスクとベネフィットのシーソーとして例えられることがあります。患者にとって大きなベネフィットがあったとしても、それに伴う複合的なリスクが上回れば、医療機器として認めることはできない、という例えです。
最後に
いかがでしたでしょうか。「そんなことわかってる」という方も多かったかもしれません。
ただ、友達同士や家族であっても根底にある考え方や思想が違うと、喧嘩になることも多々あります。それと同じように、エンジニアと医療業界では根底にある思想が異なるため、本格的にPMDAや医療現場の方と話し合いを始める前に、根底思想の差を理解しておくことは非常に有益です。
以上、最後までご覧いただき誠にありがとうございました。