研究成果が出た、多くの人に使ってもらいたい、医療機器として売り出したい。そう考えた方、まず最初にこの記事を読んでいただきたい。
この記事では、医療機器事業化経験のない研究者や開発者が最初に直面する壁である、「医療機器」という言葉の法的な定義についてご説明します。
Contents
「対象が人や動物である」=「医療機器」ではない
エンジニア視点では、検査対象や測定対象が人であることは、必然的に医療機器になるんじゃないかと思う人が少なからずいるのではと思います。私も初めはそう思っていました。
そのため、よく聞く「医療機器への該当性を確認してください」という言葉がスムーズに受け取れなかったりするんですよね。
「人に対して使うんだから、医療機器に決まってる」と。
日本の法律では、医療機器とは、
・人や動物において診断・治療・予防に使用される
・人や動物の構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具
(医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律 第2条4項(原文:e-Gov))
と定義されています。
【医薬品・医療機器 言葉の定義】
スマートウォッチなどでは、脈拍や血圧など計測できるものがありますが、人体の計測を行っているからと言ってすべてが医療機器、というわけではありません。しかし、医療機器として売られているものの中にも脈拍計や血圧計がありますよね。これはエンジニアから見れば同じ「人体の計測結果」ですが、法律的な視点では全く別のものになります。
医療機器かそうでないかの分岐点を簡単に言うなら「医療を提供することが目的であるか」です。
ピンセットなどでも電子部品をつかむ目的であれば「医療機器」には該当せず、同じ物でも手術室でガーゼや組織をつかむ目的があれば「医療機器」に該当します。
医療機器か否かの確認方法
確認方法はいくつかありますが、3つの手順を踏んで確定することをおすすめします。ただし、この3つの手段は必ずしなければいけないというわけではないので、ご留意ください。
①すでに登録されている医療機器のリストを確認して比較する
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(通称:PMDA)の公式HPに、現時点で国内に登録されている医療機器(医薬品、再生医療を含む)を検索することができます。
例えば、超音波を使った機械であれば名称の欄に「超音波」と入力すると、超音波を使った画像検査機器や器具を洗う洗浄機など色々な機器が出てきます。そのうち、最も近いものを見つけてください。
類似機器の名称がある場合
類似だと思う名称が見つかったら、その名称の定義を確認してください。定義に書いてある説明と同様の使い方の場合とそうでない場合もありますので、名称が近いからと言っても定義の確認を忘れないでください。
類似機器の名称がない場合
類似の機器がない場合、新医療機器という区分に該当する可能性がでてきます。この場合、「この既存機器が医療機器として登録されているから開発機器も医療機器である」という論法が使えないため、次の工程で必ず確認する必要があります。
②各都道府県の薬務課(薬務主管課)に相談しに行く
各都道県には、薬務課または薬務主管課が設置されています。ここでは、担当者の方と直接話して医療機器に該当するか否かを相談することができます。ただし、注意すべきことは、薬務課の担当者の方がすべて決めてくれるわけではないということです。
というのも、医療機器でなければいけないものもありますが、医療機器にしたいかしたくないかという選択肢を製造側が決められる場合もあります。極端な例でいえばピンセットを思い浮かべていただければわかりやすいかと思います。電子部品やはんだ配線を持つピンセットもあれば、手術中に使うピンセットもあるわけです。この時、原理も原料も同じピンセットですが、製造側の使用意図が異なると医療機器にもそうでない機器にもあるのです。
薬務課に行く際は、①の検索ワードと検索結果や、医療機器になるか否か、したいか否か、想定している使用用途を資料化して持っていくと、担当者の判断材料となり、相談しやすくなると思います。
【参照】
③PMDA事前相談
これまでの過程で賛否両論出ない場合は、ほとんど当初の方針で変わりはないかと思いますが、やはり最後は、審査側のPMDAに確認を取っておくと安心です。医療機器じゃないと思っていたけどほんとは医療機器だった、という後悔をしないで済みます。
PMDAとは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical devices Agency)の略称で、日本国内における医薬品や医療機器、再生医療等の管理及び審査をしている公的機関です。医療機器事業化の場合、PMDAには頻繁にお世話になります。
PMDAへの相談はかなり色々は種類があるので、最初の内はどこに依頼したらいいかわからないと思いますが、最初はPMDA全般相談を受けることが多いです。全般相談は無料で受けることができ、現状PMDAのどの相談を受けたらいいかといったことを教えてくれます。ここではあくまでPMDAの見解を聞くことのできる場であり、コンサルティングのように相談に乗ってくれる場ではないことには注意が必要です。
また、PMDA相談の申し込み方法は少しわかり辛いですが、PMDAのサイトに申込方法が書いてあるので、見ていただければできると思います。分かりやすく解説した情報に需要があれば今後記事を書く予定です。
【参照】
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical devices Agency)
ただ、PMDA相談は有料の場合がほとんどなので、最初は自治体に設置されている相談窓口やPMDAレギュラトリー相談を受けることをお勧めします。ただし、自治体によってはない場合もあるので、注意してください。
【PMDA:小話】
PMDAの相談を受ける際、中小企業やベンチャーの場合相談料が安くなる申請方法があります。また、相談料支払う振込用紙を薬務課でもらうことで手数料をおさえる方法もあります。
研究や技術を医療機器へ
これまでの確認で「医療機器」に進むこととなった皆さん。日本の医療の発展は、皆様のような方々によって支えられ、これまで進歩してきました。今後もこのサイトを活用していただき、最短で医療機器かを目指しましょう。